遠い遠い空の彼方に、澄んだ鐘の音が響いていきます。カーン、カーン、カーン、カーン。町に沈むたくさんの建物に谺して、蒼天の一番高いところにまで届きそうなくらいに。それにしても、本当に良いお天気です。雲ひとつ無い晴天です。
何故でしょう、私今、とっても身体が軽いのです。それと同じように、とっても心地よくて眠たいのです。何か、大事なことを、何か、大切なことを、誰かに伝えなくてはならなかったきがするのだけれど。・・ああ、もう限界です。瞼が閉じてしまいそうです。
今自分はどこに寝転んでいるのでしょうか。随分ふわふわで良い匂い。心当たりが多すぎて、少しの見当もつきません。でもきっと大丈夫。誰かが気づいてくれるはずです。これからもっともっと忙しくなって、もっともっとお仕事をしなくちゃいけない・・いえ、お仕事ができるようになるんですから。だから眠ってなんていられません。そうでしょう、スザク?
ああそうです。スザク、貴方です。貴方に用があったのです。ずっとずっと、貴方を探していたような気がします。手を握りたくて、何かを伝えたくて――・・あら?私はもう手を握ったのかしら?きちんと伝えられたのかしら?いけませんね、ちょっと、よく、思い出せません。
でもともかく、そうです、明日から新しい日が始まるのです。スザク、貴方と二人、この行政特区日本で。・・・それから多分、ルルーシュやナナリーや、人種を問わないたくさんの人々と一緒に、たくさんの『今日』を過ごせるのです。平和な、平等な優しい世界を、皆で作っていけるのです。そうです。そうです。そう、でした。
ああ、でも、
今は、とても、とても眠い。
スザク。
一つ、お願いをしてもいいですか?
いつか新しい世界を始めるその時が来たら
どうか貴方の手で揺り起こして下さい。
ごめんなさい。それまで私は少し眠っています。
とても暖かくて、けれどひどく静かなこの場所で。
だから、その時まで
ちょっとの間だけ、さよなら、です。
おやすみなさい