ss04 特派

※小説設定/敵地へ単身でのりこんでいったナナリー帰還後




生身の説得を終えて、ナナリー総督がモルドレットと供にアヴァロンへ帰還された。と同時に、思った通り、スザク君のお説教が始まっている。まあ無理もないか。彼にとってあの幼い総督は本当に大事な存在であるようだから。
そういえばあの子があんなに血相を変えるところを久しぶりに見たな、と思ってセシルはクスリと笑った。笑い事でもないのだけれど、でも少し可笑しい。ナイト・オブ・シックスとナナリー総督はまだとてもお若いし、腰に手をあててこんこんとお説教をするスザク君は、だからまるでお母さんみたいだ。
耳をそばだててみれば、「どんなに心配したと思ってる!」、やら「頼むからそう易々と自分の命を賭けないでくれ!」やら。怒られているはずのシックスは始終仏頂面で虚空の一点をみつめているし、ナナリー総督は総督で、なぜか嬉しそうな顔をして聞いている。スザク君には悪いけれど、ほほえましいかぎりだ。

隣を見やると、どこか少し諦めたような顔でロイドが微笑んでいた。

「どうかしたんですか?」
「いや、今の台詞、さあ」
「台詞って・・ああ、スザク君の?」
まるでお母さんみたいですよね、と笑って伝える。
それを聞いてロイドは困ったように肩を下げた。
「いやぁ・・僕。そっくりそのまま言ってやろうと思っちゃったんだよねぇ」
「は?」


「スザク君が今度、無茶した時に」
今の台詞を、そっくりそのまま。

「・・自分で言ってりゃ世話ないよねぇ」



妙になっとくして押し黙る。
それじゃあ。その時は私達があの子の父親で、母親になるわけね。









感情の線引きはとっくに諦めた。
胸のうちで自分を笑う。


擬似家族。何が悪い。













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