ss02 ジノスザ




対峙する相手は馬鹿にするようにジノを見下ろしていた。

「救う?アイツを?お前程度が?」
あざ笑うかのような呆れ口調で仮面の男は言う。
「アイツは。それはもう、孤高でプライドの高い不死鳥サマなんだよ。誰かが簡単に癒せるものでもなし、誰かに簡単に追従するものでもなし。ああ、礼などカタチに過ぎない。知らないのか。彼は、従わせても従わせても、決して手の内に入らぬ高貴な鳥なんだ」
「ニッポン製の」
「そういうことだ」
「はん、くだらないな」
ジノは精一杯強がってそう返す。


そうやって彼に差し伸べられなかった手を少しうらんだ。
お前は幼友達であったにもかかわらず、あの子を救えなかったくせに。
どこまでもどこまでも、彼の人は一人になろうとする、独りで背負おうとする。
孤高の鳥。手に入らぬ不死鳥。結構じゃないか。
手に入れたいのではないのだ。ただ。
手を差し伸べてやりたいだけで。
差し伸べられるその手が己のものであったらと、ほんの少し願ってしまうだけで。

それなのに、誰一人としてあの子を救ってあげなかっただなんて。


けれど。

一つ呼吸して今度はそのことに感謝した。

だってそうしたら私が一番手だろう?あの子を慰めてやれるのは。
ああ、一番はあの皇女様だったのかな。でも今、彼女はもう墓の中だ。

だから、私がそれをしても、いいよな?













*
戻る